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 ごあいさつ 

        

 本サイトに御訪問いただき、ありがとうございます。

 

 1980年代初頭から後半にかけて、アメリカ合衆国から輸入された買血由来の血漿分画製剤に混入したHIV(ヒト免疫不全ウイルス)により、日本の血友病患者等はHIV感染症、AIDS(後天性免疫不全症候群)に罹患しました。「薬害エイズ」事件は、これら一連の現象群の総称です。

 私たちは、1989年に国並びに製薬企業5社(ミドリ十字株式会社、バイエル株式会社、バクスター株式会社、日本臓器株式会社、財団法人 化学及血清療法研究所(当時)を相手取って大阪・東京地方裁判所において損害賠償訴訟を提起し、1996年3月29日に両裁判所同時に和解が成立しました。

 多くの社会問題がそうであるように、「薬害エイズ」も報道機関を中心に、加害者、被害者、責任、真相究明等々のキーワードによって、単純化された描写がなされがちです。しかしながら、HIVに感染した一人ひとりの患者や家族・遺族の生きてきた軌跡や再発防止を構想するうえでの教訓は、あまりにも多様で膨大なものであり、ともすれば単純な理解を拒み続けるものでもあります。

 私たちは、これら薬害エイズの実相群をあるがままに伝えるところから出発したいと考えました。もちろん、こうした試みが、さまざまな制度、概念、修辞学から完全に独立して実現可能だとは毛頭考えてはいませんが、すくなくとも、マスコミ報道や政治的偏りのある文献における記述を相対化し、さらに一人ひとりの生死の現場を感じていただけるような資料を、ここに集めて公開いたします。

 この「薬害エイズ」資料館を訪れていただいた皆さまが、「薬害エイズ」に触れていただくことによって、より良い社会の到来の一助となることを願っています。

                             大阪HIV薬害訴訟原告団 代表 花井十伍 

はじめに

 

 主に1980年代前半、私たち多くの血友病患者に深刻な被害をもたらした「薬害エイズ」――血友病治療のための輸入非加熱血液製剤等によるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染――事件は、1989年5月に大阪で、同年10月東京で損害賠償を求める民事訴訟が提訴されました。この「薬害エイズ」訴訟は、単なる損害賠償訴訟の域を越え、エイズに対する社会の正しい理解を求める運動、また、広く薬害根絶を目指す運動として、進められました。そして、病を抱える被害者たちにとって長く厳しい日々を経て、1996年3月29日、裁判は「和解」という形で決着を迎えるに至ったのです。日本における最初の感染例が一般に報道されてから11年、それに先立ち、感染被害者が AIDS/HIVとの闘いを強いられはじめてから約14年、既に400名を超える人々の命が喪われていました。

 しかし、「和解」は事態の解決へと自ずから直結するものでは決してなく、被害者の置かれた状況の改善に向けての第一歩に過ぎませんでした。HIV 感染症の医療体制の整備、新しい治療薬の研究・開発・情報の提供、残された遺族に対する恒久対策や未だ続く差別偏見への取り組み等、幾多の課題が不十分ないしは手つかずのまま残されていました。 そこで、大阪HIV 薬害訴訟原告団(以下、原告団)は、和解成立前より検討・策定してきた構想を基に、原告一人ひとりから和解金の一部の拠出を受け、課題解決を目指す協議や諸活動の財源とすることを決意したのです。まさに原告の血肉が、そして生命が姿を変えたともいうべき貴重な財源に基づき、私たちは様々な協議や活動に力を注いできました。また、2000年には、原告団との緊密な連携の下に「 特定非営利活動法人 ネットワーク 医療と人権〈 MERS 〉」( http://www.mers.jp/ )が設立、「 薬害エイズ」の真相究明をはじめ、遺族等相談事業など、 原告団だけの力では実行することの困難な役割をも担いつつあります。

 

 昨2016年3月は、和解から20周年の節目となりました。私たちは、先に記した様々な目標の実現、懸案の解消のために力を注いできましたが、残念ながら、十分な達成には未だ至っていません。とりわけ、最大の課題として掲げた薬害根絶に関しては、和解所見を受け、1999年8月24日、厚生労働省内に「薬害根絶『誓いの碑』」が建立されたものの、この20年の間にも(疑い例を含めて)薬害ヤコブ病、薬害肝炎、 MMR(新三種混合)ワクチン、タミフル、イレッサ、 子宮頸がんワクチンなど多くの事象が社会を騒がせ、私たちの切なる願いは繰り返し裏切られる結果となっています。また、2015年には、被告企業の一つであった化血研(一般財団法人 化学及血清療法研究所)が和解当時をも含む長年にわたって重大な不正行為を重ねていた事実が発覚し、私たちは改めて怒りと無念の想いを覚えることとなりました。

 今後とも私たちは、今を生きる患者、家族、遺族の日々を向上させるため、力を尽くすとともに、私たちの経験のいくばくかを広く社会の発展に資するものとして皆様に伝達・共有しながら、運動を進めて行きたいと考えます。 

 これからも御支援、御協力のほど、よろしくお願いいたします。

 

「薬害エイズ」資料館

 「薬害エイズ」とは、厚生省が承認した血友病治療のための輸入非加熱血液製剤等により、約5000名といわれる日本の血友病患者のうち、1450名にも及ぶ人々が感染被害を受け、そのうち670名ものかけがえのない命が喪われた薬害事件の総称です。 

 エイズ(後天性免疫不全症候群 AIDS=Acquired Immune Deficiency Syndrome)は、1981年6月、男性同性愛者5名に発生した奇病として米国疾病予防センター(CDC)が報告したことから世に知られるようになりました。当初は病原体も不明なまま、エイズは米国内に拡大し、1984年に発見された原因ウイルス(HIV)が混入した血漿を原料とする非加熱血液製剤(血液凝固因子製剤)を米国から輸入・使用していたことから、日本の血友病患者にも襲いかかかることになりました。

 

 この非加熱製剤は、主に1982年から1985年にかけて多数の血友病患者にHIV感染をもたらし、その被害者及び家族は、疾病自体の重荷に加えて、特に煽情的かつ理不尽なメディア報道が惹き起こした差別・偏見・誤解により、職場や学校など、社会からも忌避・排除されるに至りました。そればかりか、たのみとすべき医療現場においてさえ、適切な医療を受けられなかった例も少なくなく、さらには、感染告知の遅れなどから、二次・三次感染の被害も生まれたのです。

 

 このような状況の下、1989年5月に大阪で、同年10月に東京で、感染被害者と遺族は、危険性を認識しながらも非加熱製剤を認可・販売しつづけたとして、厚生省(当時)と製薬企業5社(ミドリ十字、化血研、日本臓器、バクスター、バイエル、当時)に対する損害賠償訴訟を提起しました。これは、先に述べたとおり、損害賠償の請求にとどまらず、エイズに対する社会の正しい理解を求める訴え、また、薬害根絶を目指す訴えでもありました。即ち、この訴訟を通じて獲得すべき目標として掲げられたものとは―― 

 • HIV感染によってもたらされた被害の回復(被害救済即ち損害賠償)。 

 • エイズに対する社会の差別・偏見の是正と解消。 

 • 血液行政の是正と薬害の根絶。

――の三点でした。

 私たちがこれらを主張しつづける裁判の過程において、被害の悲惨な状況、あるいは、厚生省や製薬企業が隠していた事実が次々と明らかになり、原告を支援する運動も日増しに広がりを見せ、社会問題化することとなりました。

 

 こうして1995年3月東京で、同年7月大阪で裁判は結審を迎えましたが、その直後、裁判所から和解に関する打診がありました。これを受け、原告・弁護団は、“被告側が責任を認め謝罪すること、裁判所が判決に代わる見解を公的に示すこと”の二点を前提条件として、和解協議を受諾しました。その結果、1996年3月、和解が成立したのです。

 

 被告らの「責任」を認めた裁判所の所見を前提として、この和解において残された多くの課題を解決すべく、国は被害者救済について原告らと協議をしながら各種の恒久対策を具体化させることを約束し、現在に及んでいます。

 一方で、和解成立後、安部英帝京大学教授刑事事件(帝京大ルート)、ミドリ十字元・現社長刑事事件(ミドリ十字ルート)、松村明仁元厚生省生物製剤課長刑事事件(厚生省ルート)及びミドリ十字株主代表訴訟が提訴され、それぞれの判決に至りましたが、完全な真相究明が実現したかについては、不十分と言わざるを得ません。 

 厳しい条件の下で進められた私たちの戦いは、当事者個々の生活におけるプライバシーを慮るならば、20年を経た現在でもなお、未だその全貌をありのままに示すことは困難です。しかし、将来にわたって悲惨な薬害が決して繰り返されることのないよう、私たちの経験した出来事を皆様に伝え、共有していただくため、ここに「薬害エイズ資料館」として、裁判や協議・交渉の経緯、運動の実際、当事者の想いなど、長年にわたる様々な積み重ねの一部を公開することといたしました。これらの資料が、薬害根絶のために少しでも役立ってくれることを願うものであります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

​2017年4月

きみの歩いた道

 

 薬害エイズ 資料館「きみの歩いた道」というこのサイトのタイトルに含まれる「きみ」とは、血友病患者をはじめとする輸入血液製剤によってHIV感染被害を受けた人々総てを表しています。そのひとりひとりが、かけがえのない愛する息子であり、夫であり、父であり、きょうだいでした。そしてまた、大事な友であり、共に歩いた仲間でもありました。
 私たちは、「きみ」を決して忘れません。

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