平成16年2月5日


厚生労働省 

医政局長 殿 
健康局長 殿 
医薬局長 殿 
保険局長 殿 

平成15年度 医療協議 議題

 

東京HIV訴訟原告団

 

大阪HIV訴訟原告団

 

 

一.医療協議においては、平成15年8月15日付け厚生労働大臣宛「HIV医療体制整備に関する統 一要求書」の内容に加え、追加事項、および重要な事項について協議されたい。

1. 医療全般に関する要求


1.1 独立行政法人への移行に伴うHIV訴訟原告団との協議の持ち方について

平成16年度より、国立病院(ナショナルセンター、ハンセン病療養所を除く)および国立大学病院が独立行政法人へと移行し、厚生労働省も組織改編が行われる。厚生労働省は、これに伴いHIV訴訟原告団とのエイズ医療体制の整備に関する協議(中央運営協議会・医療協議会等)の要綱を改められたい。

1.2 HIV/HCV重複感染者の医療体制整備

我々HIV感染被害者は、HIVとHCVの重複感染により、特異的かつ急激な肝臓の悪化で肝硬変・肝ガンに至り、近年、死亡する者が顕著に増加している。また多くの薬害HIV/HCV重複感染者は、一刻も早い肝臓治療を必要としており、もはや猶予がない緊急事態といえる。薬害HIV/HCV重複感染者のC型肝炎治療は、HIV感染症における重篤な合併症として、一般の肝炎治療の枠組みを越えた迅速かつ積極的な治療を行う必要がある。こうした現状を踏まえて、早急に薬害HIV/HCV重複感染者の肝炎治療体制の整備を図られたい。 
 そこで、緊急的な課題として以下の点を要望する。

1) インターフェロン(IFN)の自己注射 

 薬害HIV/HCV重複感染者のIFN自己注射を保険適用していただきたい。 

2) 重症被害者への迅速な生体肝移植の実施 

生体肝移植が成人にも保険適用となったことから、肝硬変、肝ガンといった重症の薬害HIV/HCV重複感染者に対して、生体肝移植の実績のある施設と連携を取りながら、ブロック拠点病院においても、症例に応じて、早急、かつ積極的に生体肝移植が受けられるよう対応していただきたい。 

1.3 抗HIV治療の長期化に伴うトータルケア医療体制の充実化 
 我々HIV感染被害者の抗HIV治療期間は、我が国のHIV治療実態において最も長期に渡るものといえる。最近、抗HIV薬の治療内容の変遷による影響(耐性HIVの発現等)や、長期服用に伴う副作用をはじめ、さまざまな問題が顕著に出現してきている。今後も被害者の命を守っていく上で、抗HIV薬の持続的長期服用は避けられないところから、有効性・安全性を重視しつつ当該薬剤の害毒性も含め、研究体制および、HIV感染被害者のトータルケア医療体制を整備されたい。また同時に、安全性・有効性をより発揮できる薬剤の研究開発に力を入れていただきたい。 

1.4 メンタルヘルス・ケアの医療体制整備 

 最近、抗HIV治療(HAART)の長期化、抗HIV薬の副作用、インターフェロン療法などが原因と思われる精神・神経的症状(躁うつ、不眠、自殺念慮、等)を呈する感染被害者が増え、これらが原因となって死亡したと考えられる被害者が少なくない。 
 そこで、緊急的な課題として以下の点を要望する。

1) HIV感染被害患者のメンタルヘルス・ケア医療体制を早急に構築し整備されたい。 
2) HIV感染被害患者のメンタルヘルス・ケア、およびIFNや抗ウイルス剤による中枢神経系の副作用に関する研究体制を推進されたい。

1.5 エイズ治療・研究開発センター(ACC)・ブロック拠点病院体制の充実・強化 

和解確認書に基づく被害者への救済医療、及び我が国のHIV医療体制の枢軸としてふさわしいものにするため、ACCならびにブロック拠点病院に対する予算措置を拡充し、研究・治療・情報・研修機能を充実させ、患者参加医療の具体化を示されたい。また、被害患者の最近の重要課題となっているHCV治療や血友病に伴う合併症に関し、ACC及びブロック拠点病院を、HCV肝炎高度発症予防治療・血友病治療中核病院として位置付けられたい。 

1.6 救済医療としてのHIV医療スタッフの確保 

ACCならびにブロック拠点病院におけるHIV医療スタッフ強化について、ACC運営協議会や中央運営協議会で解決をみない点に関し、医療協議で解決を図られたい。 
なお以前から要求している通り、患者数の増加が著しい地域には、リサーチレジデントに依存するだけでなく、率先して専任の正規職員を配置されたい。 

1.7 新薬の迅速導入体制の構築 
以前から我々が指摘しているとおり、抗HIV薬の承認申請・販売などは、製薬企業の市場原理等に依存しているため、日本国内に輸入販売会社が存在しない場合に、迅速な抗HIV薬の導入ができない。すでに欧米で第1選択として有効であるとの認識の薬剤(テノフォビル,TDF)は、FDA認可は2001年10月26日であるが、2年以上が経過した現在でも、日本では承認に至っていない。 
ここで改めて、海外承認薬で国内承認、または開発中の医薬品について、恒常的かつ安定化的に新薬を導入する体制を早急に構築されたい。また、これらの必要薬については、希少薬病用医薬品開発費一部助成、外国臨床データの活用、優先審査など、あらゆる措置を活用し、安全かつ迅速に必要とする患者に届くような体制を構築されたい。 

1.8 検査体制の整備 

現在、抗HIV療法を実施する上で、欠かすことのできない薬剤耐性検査・薬剤血中濃度検査、また日和見感染症診断検査などを速やかに実施できるよう体制の整備に努力されたい。 

1.9 診療報酬の減額査定問題

 昨年度の医療協議において「HIV感染者の医療費に関して調査研究を行うことについて検討する」旨の発言があったが、この点について、現在の状況を説明していただきたい。 

1.10 文部科学省の中央運営協議会等参加における要綱改訂

 中央運営協議会への文部科学省参加を要綱改訂により正式に位置づけられたい。 

1.11 血友病治療環境の整備 

1) 遺伝子治療を含む研究体制について 

 血友病の根治療法を確立させることによって、血友病患者は未知ウイルスの感染などのリスクから解放される。したがって血友病の根治療法を早期に確立するとともに、遺伝子治療等の血友病の根治療法に係る研究開発に対して予算を集中的に投入されたい。 

2) 血友病性関節症の治療体制整備および整形外科医の確保 

 HIV感染被害患者は、これまで人工関節置換術等の大きな手術を特定の医療機関でしか実施できなかった。今後はブロック拠点病院においても実施可能となるよう、厚生労働省は、感染防止に必要な各設備(クリーンルーム等)を整えると共に、血友病性関節症に関連した整形外科的治療体制(関節液注入療法、リハビリテーション等を含む)を早急に整備されたい。 
 ACCおよびブロック拠点病院に、これまで血友病性関節症の治療に積極的に携わってきた整形外科医を招聘するなど、血友病性関節症を診断・治療可能な人的体制を確保されたい。 

3) 血友病専門医の確保について 

 かねてから要求するところであるが、薬害被害者の治療に関し、上記関節症治療の現場においても、またHIV/HCV重複感染患者においても、肝臓機能の低下に伴い高度な止血管理が不可欠であり、ACCおよびブロック拠点病院に、止血および凝固管理の専門医師(血友病専門医)の常勤体制を、早急に確保されたい。 

1.12 各種研究の推進について 

現在、HIV感染症については、厚生科学研究エイズ対策研究事業等の活用を通じて、各種研究を推進している。しかし今後は、さらに先駆的かつ高度な薬剤・検査・治療法を開発する必要があるといえる。また血友病の遺伝子治療については、海外特許等の関係から短期に集中的に多額の研究費を投入することに大きな成果が得られる分野である。こうしたことを踏まえ、以下の点を要望する。 

1) 省庁を超えた各種研究の推進について 

厚生科学研究エイズ対策研究事業だけでなく、厚生労働省管轄の財団等、文部科学省、経済産業省等々、省庁を超えた抗HIV治療薬の開発・医療、HIV/HCV重複感染者治療、血友病の根治治療、血友病関節症治療など、各種研究の推進支援、および発症予防の研究推進を図られたい。 2) 患者参加型医療を目指した研究の推進について 

 ACCやブロック拠点病院において、患者団体と医療者との積極的連携やピアによるサポート、コーディネートとの連携など、患者との連携により医療の質の向上を図る試みがなされている。 
 こうした取り組みを今後のHIV医療に生かすべく、研究テーマとして取り上げられたい。 

 

2. エイズ治療・研究開発センターに関する要求


エイズ治療・研究開発センター(ACC)の医療体制拡充と機能強化について 

 ACC開設以来の総患者数は既に1,200人を越えている。救済医療における日本の司令塔として、また、HIV医療のナショナルセンターとしての、ACCに課せられた役割、期待はきわめて大きい。ここにきて、我が国のHIV感染者が急増し、「いきなりエイズ」という患者が増加しているが、これは欧米諸国に比較すると極めて異例な事態である。こうした患者急増の我が国及びアジア諸国の医療面をリード・サポートしていく役割を果たすためには、ACCの機能強化、充実は一刻の猶予も許されない課題である。にもかかわらず、近年の医療協議、ACC運営協議会等で原告団が提案しているACCの機能強化案について、国は傍観しているかのような対応であり、機能強化は遅々として進んでいないのが現状である。これらの状況を受け、今回の議題には、緊急性の高い重要な案件については要求内容を詳述するが、前年から継続している要求については、項目のみ提示させていただくこととした。厚生労働省は、これら原告団の要求を真摯に受け止め、ACCの機能強化・充実に向け、早急な対応をされたい。 

2.1 物的整備に関して 

1) 国立国際医療センター病院建替えの件 

昨年、ACCのある国立国際医療センター病院の建替え計画が提示された。建替え後のACCの姿について、ACCの機能が拡充されるか、原告団としては強い関心を持っているところである。昨年末、国立国際医療センター側から基本構想が提示されたところであるが、国立国際医療センター内におけるACCの位置付けが明確なものになっていない。救済医療の司令塔として、また日本のHIV医療のナショナルセンターとして、病院内外におけるACCの位置付けを明確にするとともに、最低限昨年のACC運営協議会において原告団が提示した規模の設備を整えた施設としていただきたい。また、基本構想に基づく構想図面を原案の段階で原告団に提示される約束であるが、いまだその提示がない。早急に示されたい。 

2) 専門外来拡張の件

今年度の外来受診者数は、月平均700人を越え、一日平均でも30~40名となっている。現在HIV医療は外来中心の診療になってきており、患者に対する外来でのきめ細やかな対応が患者の命・治療継続を左右する。また、感染者に対する予防啓発介入等、外来の役割は多方面にわたっている。現在の3診療室では、外来はすでにパンク状態であり、外来処置室をも使用して急場をしのいでいるなど、病院建替えを待てない状況にある。早急に外来そのものを拡張し、5診療室を設置するよう求める。

3) 首都圏医療協力部の新設、および首都圏医療協力支援室の確保 

 中央運営協議会の議題にもあるとおり、原告団としては、我が国の患者の7割が集中する首都圏地区については、ACCに首都圏医療協力部を新設し、拠点病院等の機能を活用しつつ首都圏の医療体制の充実化を図っていくという提案をしている。このため、院内設備として、首都圏医療協力支援室を早急に確保されたい。 

4) ACC情報室拡充 

 ACCの重要な機能として病院内外への双方向性を確保した最新のHIV医療情報を提供することがある。我が国のHIV感染者激増に対する医療アクセスを有効に機能させることはACC情報室の診療支援が必須である。ケア支援室を含め、患者に最適な医療を実現するためにもACC情報室の充実化を早急に実現されたい。 

5) 治療開発室(ACC研究室)の独立 

 1986年以来、我が国のHIV感染者及び薬害被害者の多くの検体を保存し、またこれらを治療・研究開発に供してきたACC治療開発室は医療センター研究所棟研究室を間借りしている。そのためHIV治療研究開発の現状についても最新の研究機器導入に支障がある。また、歴史的な資料としての検体を保管するための冷凍室を完備した治療開発室の確保をされたい。 

6) 最先端医療機器の優先配置 

2.2 人的配置及び増員について 
1)首都圏医療協力部に係る医師、コーディネーターナースの増員 
 首都圏医療協力部新設に当たり、診療支援(主として派遣業務)を実効あるものにするため、専任の医師、コーディネーターナースを配置し、拠点病院等との連携に当たらせる必要がある。首都圏における患者数等を踏まえ、5チーム最低10名程度の増員を図られたい。 

2) 血友病専門医(止血管理等々)のACC配置の件 

3) ACCと国立ブロック拠点病院や他ブロック拠点病院との人事交流について 

4) 治療開発室(ACC研究室)の研究職員配置の件 

5) 肝臓・消化器専門医師、整形外科医師の配置の件 

2.3 その他 

1) ACCに配置された看護スタッフをACC所属とする件 
現在看護スタッフについては、国立国際医療センター看護部とACCという二重の指揮命令系統に服するが、これを改めACCに一旦配置された看護師はACCの指揮系統にのみ服するという体制にされたい。つまり、ACC配属中はACCに所属するものと改められたい。またACCを離れたときは、速やかに国立国際医療センター病院看護部に帰属するものとする。 

2)最先端・専門医療充実のための予算及び支援措置 

3)ACCのHIV医療のナショナルセンターとしてPRの徹底          

2.4 感染症新法、国立国際医療センター等とエイズ治療・研究開発センターの関係 

感染症新法は、薬害エイズ事件の反省も込め、被害者の要望を取り入れ、予防・人権・医療を総合的に勘案して成立したものである。その感染症新法に対応して、国立国際医療センターは重責ある役目を担うこととなった。このような経緯から、国立国際医療センターの感染症新法に基づく医療機能と、そこに特別な位置付けで設置されているACCとの関連は、私たちは被害者にとっても重大な関心事である。よって、国立国際医療センターの役割追加により、ACCの体制にわずかなりとも変更のあるときには、必ず原告団と協議する場を設けることを、厚生労働省は確約されたい。 

2.5 エイズ治療・研究開発センターの将来構想(独立) 

 和解時のエイズ治療研究センター(ACC)設立協議において、原告団は特別な使命を遂行するため、また既存の制約や干渉による運営障害を避けるため、独立の施設とするよう要求した。しかし厚生大臣協議等で、独立の施設を作るには3年かかるとのことから、その設置の緊急性に鑑みて、当面の措置として国立国際医療センター病院内に特別な位置付けで置くこととした。 
近年、国立国際医療センターや国立病院部が、ACCの特別な位置付けを忘れ、既存の制約等々による運営障害を招いているところは見過ごすことができない。患者主体の視点を欠いた医療施設等の都合の押し付けは薬害エイズの被害拡大を招いた要因であった事を忘れてはならない。既成の概念に囚われない患者も参加した新しい医療モデルを構築し、患者の身になった医療・新たな疾病の治療開発を行おうというところにACC設置の原点がある。つまりACCは、21世紀に向かう新しい医療システムの出発点でもあり、また世界的課題でもあるHIV感染症医療の我が国の拠点でもある。そうした理念に基づいて実効を挙げていくためにも、血友病患者の被害救済医療を十二分に行うことができるようにするためにも、改めて、当初の要求の通りエイズ治療・研究開発センターを、研究施設を含め、大規模な独立施設とすることを求める。 

 

3.国立病院 大阪医療センターに関する要求


 昨年11月1日より国立病院 大阪医療センター内に、「HIV/AIDS先端医療開発センター」が設置された。この「HIV/AIDS先端医療開発センター」が、実質的に臨床研究センターと同等程度の機能を有した設備・人的体制の整備ができるよう、また今以上にエイズ治療・研究開発センターを補完する役割を果たすため、下記項目の予算化について、厚生労働省としてあらゆる努力を尽くされたい。 
1) HIV/AIDS先端医療開発センターの整備・拡充 
2) 免疫感染症科の独立 

二.中央運営協議会積み残し議題 

三.医療協議の議事録作成 

厚生労働省は、速やかに平成15年度中央運営協議・医療協議の議事録を作成し、東京・大阪両HIV訴訟原告団・弁護団に送付されたい。 

 

以上


 

 index > 大阪HIV薬害訴訟原告団 > 現在地

©Copyrights @ 2017 mers.jp All rights reserved.  with Wix.com