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2000年3月10日

 

  厚生省 

  保健医療局エイズ疾病対策課 御中 

  保健医療局国立病院部政策医療課 御中 

  健康政策局研究開発振興課 御中 

  医薬安全局企画課医薬品副作用被害対策室 御中 

  医薬安全局審査管理課 御中 

  保険局医療課 御中 

    

  

平成 11年度 
医療協議 議題

 

    

  

東京HIV訴訟原告・弁護団

 

    

  

大阪HIV訴訟原告・弁護団

 

1 はじめに 

  薬害エイズ訴訟の和解を踏まえ、HIV薬害被害患者の原状回復を図るべく、HIV薬害訴訟の恒久対策の柱として、原告団と厚生省の医療協議を進める中で、医療体制整備及び推進課題として、平成9年4月よりエイズ治療・研究開発センター(以下ACC )/地方ブロック拠点病院体制の本格的稼働が始まった。また欧米及び和解後の我が国のエイズ治療研究の進展と 特に最近の抗HIV薬の多剤併用療法の普及により、患者が受けるHIV医療水準は大きく向上しつつある。医療協議を積極的に進める中で、我が国で当初指摘されていた医療格差や地域格差が縮まりつつある。
しかしながら、まもなくこのエイズ医療体制がスタートしてから3年が経過する中、患者に対して適切かつ良質なHIV医療が提供されているとはいえない現状にある。またHIV薬害被害患者のHIV感染のみならず、HCV罹患に伴う抗HIV治療の難局化、血友病関節症などの積極的治療の問題などが立ちはだかっている。ACC/ブロック拠点病院が、このような治療や検査に関する問題、病床確保などの病院問題、医療体制の運用に関する問題、地方固有の問題など、さまざまな問題を抱えつつ、新たな医療を展開すべき課題が発生してきている。
そこで平成11年度の厚生省/HIV訴訟原告団との医療協議の議題として提出する。厚生省はこれを真摯に受け止め、関係機関とも協議し、問題解決のため最大限の努力をされたい。 

    

2薬害被害者救済のための医療に関して 

21新規抗HIV薬の導入および新しい抗HIV療法の研究推進 

  抗HIV薬の迅速審査制度が平成10年11月から開始されたが、実際には承認まで10ヶ月近くを必要とした。また抗HIV薬治療研究班、ACC、国立のブロック拠点病院で確保可能な新薬であったにもかかわらず、緊急に必要としている患者の元へ届かなかったために、平成12年初頭、HIV薬害被害患者が無念な思いのまま亡くなられたケースがある。
このような抗HIV新薬を供給するシステムの不備な現状は、今後欧米で承認されるであろう新規抗HIV薬の迅速な導入を切望する原告らHIV薬害被害患者の信頼や期待を大きく裏切るものである。したがって厚生省は常に欧米の新薬の状況を把握し迅速に我が国のHIV感染症治療に適応できるよう、恒常的な機能を持つ抗HIV薬・日和見感染症治療薬の早急な導入(承認)に責任を持つシステムを新たに構築されたい。 

    

22インヒビター治療を含む血友病医療体制の強化 

    

 1特殊な血友病治療の保険収載について 

  血友病治療は、従前の血液製剤に代わり抗原抗体反応を利用したモノクローナル製剤や遺伝子工学技術を利用したリコンビナント製剤などが登場し進歩してきている。しかしながら、HIV薬害被害患者にとって福音となった抗HIV薬としてのプロテアーゼ阻害剤は、同時に血友病患者にとっては出血傾向の増大という重篤な副作用をもたらすものであったため、血液製剤による止血管理が今まで以上に重要となっている。
また、血友病患者の中には、生体内において、投与された製剤の凝固因子が異物と認識され、抗体を産生する症例(以下、インヒビター保有血友病患者)が存在する。かかる患者は、通常の血友病よりも止血管理が困難であり、プロトロンビン複合体製剤など特殊で非常に薬価の高い製剤を使用する他に代替的な療法はない。
そのため、時に重篤な出血を防ぐべく、一般的な治療指針とは異なる多量の製剤を例外的に使わねばならないこともある。ところが現在多くの血友病医療機関において、このようなケースの診療報酬請求が減額査定され、当該医療機関が多額な医療費差額を負担する事態が発生している。このままでは血友病を診療しようとする医療機関は尻込みせざるを得ず、間接的な診療拒否にもつながりかねない。ひいては血友病医療の後退、血友病医療機関の縮小の危険性も十分考えられる。万一このような事態が発生した場合、HIV薬害被害患者にとっては、血友病治療の道を閉ざされることになる。
そこで厚生省は、医療費軽減の方策として、不合理な減額査定を行わないよう、さらにHIV薬害被害患者の救済の医療及び血友病医療を再認識し、血友病治療の診療報酬の審査についてもHIV感染症専門医および血友病専門医の意見等を参考として適切に審査が行われるよう指導されたい。
また、インヒビター保有血友病患者に対する免疫寛容療法についても、速やかに実用化に向けたプロトコルを確立し積極的に研究を推進されたい。さらに血友病患者の止血治療の特殊性に鑑み、これらの特別な治療法については保険収載を行っていただきたい。 

    

22血友病とその合併症に関する治療体制の強化 

  平成12年度の厚生科学研究において「血友病とその合併症の克服に関する研究」が行われる予定になっているが、特に以下の諸事項については積極的に研究の推進を行い、その研究成果が速やかにACC/ブロック拠点病院等のHIV医療の臨床現場で応用できるよう、厚生省は、あらゆる施策を講じられたい。
また、遺伝子治療、インヒビター治療に関しても、実践的研究が推進されるよう努められたい。 

    

 

1)

HIVとHCVの複合感染の問題 

  我々HIV薬害被害患者の約9割以上はHCVにも感染しており、すでに肝硬変に至ってしまった患者や、肝機能の悪化により抗HIV治療が行えない深刻な患者も少なくない。したがって肝硬変など極度に悪化した患者に対しては、生体肝移植なども治療の選択肢として視野に入れつつ、それぞれの肝炎増悪の状態に応じた治療体制を構築されたい。
特にHIV薬害被害患者のHIVとHCVの複合感染問題に関して、以下の項目について要求する。 

    

 ・臨床効果のある新しい治療法の迅速承認と研究推進 

 現在治験で行われているインターフェロンとリバビリンとの併用など、臨床効果のある新しい治療法については、治療期間、治療回数などに制限を設けずに、迅速に保険収載を進められたい。 

 ・強力ミノファーゲンCの自己注射 

  本年3月1日、条件付きでインターフェロンの再投与を承認する方針を厚生省は報道発表した。そこで、そのインターフェロン再投与承認までの間、また免疫機能低下によりインターフェロン投与ができない患者に限り、強力ミノファーゲンCの自己注射(点滴用大容量ボトル含む)を認められたい。
 上記要望を踏まえ、血液製剤を介して感染したHIVとHCVの重複感染被害について、早急にその苦しみの回復を実現されるべく治療の研究に積極的努力をされたい。 

    

 

2)

抗HIV療法における血友病患者に特有な副作用問題 

  プロテアーゼ阻害剤の副作用である出血傾向の増大は、血友病患者にとって深刻な問題である。この副作用に関して、その発生頻度や対処法などの実態を調査・検討し、HIV薬害被害患者への情報として提供し、注意を喚起されたい。 

    

 

3)

整形外科的治療および運動療法による血友病性関節症の治療体制の強化 

  我々HIV薬害被害患者は、原疾患である血友病のために多くの関節障害をもち、社会生活に大きな制限を強いられている。このような血友病性関節症の整形外科的問題を解決するような医療体制を構築されたい。
また国立大阪病院には、血友病関節症に対して関節運動学に基づいたリハビリテーション治療を行い、劇的な改善を認め社会復帰している血友病患者が多い。このような運動療法による血友病性関節症の治療・臨床研究を広くACCやブロック拠点病院等で実施することによって、HIV薬害被害患者の社会復帰支援を図られたい。 

    

 3HIV関連検査の拡充について 

  

抗HIV薬の薬剤耐性検査をはじめとして、今後もさまざまな研究の進歩につれ、抗HIV治療に関連した新たな検査方法の開発が予想される。
その場合、厚生省は新しい検査方法についての臨床研究体制を構築し、その成果がいち早く、ACC・ブロック拠点病院等の臨床現場に適用できるようなシステムを構築されたい。また新しい検査方法や実用化された検査キットの臨床的意義・有効性が判明した場合、速やかに保険収載を目指す等、厚生省はあらゆる施策を尽くすことを確約されたい。
また以下の検査方法についての現状(臨床研究体制、費用負担、保険収載する場合の問題点、承認予定等)を具体的に報告されたい。

 

    

 

1)

HIV-RNA高感度測定検査  

2)

抗HIV薬血中濃度測定  

3)

抗HIV薬剤耐性検査(遺伝子型、表現型) 

    

 

抗HIV療法における服2.5 薬指2.6 導の実施について 

  抗HIV治療における多剤併用療法が複雑化している現在、患者が治療を長期的にかつ有効に継続するためには、専門薬剤師による効果的な服薬指導が重要になってきている。これまで各ブロック拠点病院では、HIV専任薬剤師が外来・病棟問わず、しかも患者自身に積極的な行動変容を導く服薬指導を献身的に実施している。
しかし、かかる薬剤師の努力は、個人的な資質や病院の理解によるところが大きく、システムとしてみた場合には脆弱である。このような抗HIV薬の服薬指導を、拠点病院においても広く実施できるよう、保険収載・保険点数面の大幅改善や薬剤師育成など、積極的な施策を確約されたい。 

    

 

HIV薬害被害患者の心理的・社会福祉的支援の拡充について 

  抗HIV治療の進歩や、HIV感染者の身体障害認定等の制度により、HIV薬害被害患者の社会復帰の機会が増えてきている。しかしながら、依然として、いわれなき差別・偏見にさらされている患者も少なくない。
したがって、HIV薬害被害患者に対する臨床心理士をはじめとする専門家もしくはピアカウンセラーによる心理的支援、MSWによる社会福祉的支援が広く実施されるよう、厚生省は、HIV薬害被害患者の心理的・社会福祉的支援の拡充について、積極的な施策を確約されたい。 

    

 

専任HIV診療スタッフ(コーディネータ・ナースを含む)の兼務の是正 

  ACCやブロック拠点病院は、HIV感染症医療の高度医療を提供していく必要から、HIV感染症治療に専念できる環境を確保するため、専門医や専門看護婦(CN等を含む)をはじめとする専任HIV診療スタッフの配置、チーム医療体制を構築してきた。しかし、当初の趣旨を踏まえず、病院全体でその職を兼用・活用して、本来の職務から離れ、専門・専任とは名ばかりになっている病院が少なくない。
HIV感染症ほど厳格な治療や自己健康管理を数十年も継続する必要がある疾患はなく、また、この疾患ほど日々治療指針等が更新される疾患は他にない。にもかかわらず専門・専任化された医療者は、HIV感染症以外の業務に追われる中で、各個人の献身的な努力により、日々進歩する治療方法やHIV関連情報を入手し、日常の診療業務に応用しているのが現状である。
このまま感染者が増え続けていけば、専門・専任化された医療者は疲弊し、今後も手厚く良質なHIV医療を実施できるよう保証はない。したがって厚生省は、現在専門・専任としている医療者が、真にHIV感染症業務に従事できるよう病院当局等を指導されたい。 

    

 

厚生科学研究費補助金エイズ対策研究事業の研究班について 

  厚生科学研究費補助金エイズ対策研究事業やエイズ疾病対策課予算などによる各種エイズ対策予算の内訳や、研究班の構成・数について説明されたい。 

    

3ACCに関連する事項 

    

 

1

エイズ治療・研究開発センター(ACC)の病棟増床   

HIV薬害被害患者は、感染時期が長い年月を経て病状の重いものが多く、濃厚治療・緊急入院などを含め、頻回入院や長期入院を必要とするものが多い。またプロテアーゼ阻害剤の服用による出血傾向増大、血液製剤からのC型肝炎罹患による肝臓状態の悪化(慢性肝炎・肝硬変・肝臓ガン)と抗HIV薬服用により肝臓状態の増悪傾向の深刻化から、これらを要因とする手厚い入院治療の必要性が増加している。
さらに、抗HIV服用導入の際に副作用が頻発するため、その緊急入院なども増えている。国立国際医療センター病院に設置されているACC病棟(5階南)の20床は、血液製剤以外の感染による重篤なHIV感染症患者の緊急入院などが増加しており、満床状態が続いている。そのため、入院待ちや、回復状態を待たずに退院を余儀なくされ、HIV薬害被害患者は、重篤な疾患にもかかわらず通院治療を続けているのが現状である。
この緊急課題についての原告団の要求に、本年1月17日の厚生大臣交渉において大臣は、国立療養所東京病院が長期入院患者を引き受けるという理由で、ACCの増床に消極的回答をされた。しかし国立療養所東京病院の現状を調べたところ、良質なHIV医療を実施できる体制にない事が判明し、ますますACCの緊急的濃厚治療やHIV薬害被害患者の救済医療のための増床の必要性が明らかとなった。よって、病棟5階全体をACCの病棟として、早急に整えられる事を強く要望する。

 

    

 

2

ACC医療スタッフの充実化 

  患者の医療の調整を図る調整官・コーディネータ・ナースの増員を要求する。また、専門外来拡張の要望に併せて、外来看護婦の増員を求める。
情報・研修担当医師の確保、及び肝臓・消化器専門医師、血友病止血管理・治療研究の血液凝固専門医師の確保を要求する。 

    

 

3

ACC専門外来拡張の要望 

  現実問題としてACC専門外来を訪れるHIV感染症患者は増加の一途をたどっている。現在の良質な医療環境を保持しつつ患者の増加に対応するため、専門外来の拡張を要望する。 

    

 4ACCの研修機能の強化 

  今後のHIV医療体制の充実のためには、HIV専門医師の育成などが必要不可欠である。現在ACCにおいて、HIV診療に関わる看護職、薬剤師等の育成を目指し、他施設から医療者の臨床実地研修の受入れを実施しているが、この研修機能をより一層充実させ、HIV専門医療職の育成を図られたい。 

    

4各ブロック拠点病院に共通する事項 

    

  平成9年度からのエイズ医療体制がスタートしてまもなく3年が経過しようとしているが、ブロック拠点病院に対する人員の配置、予算措置をめぐって、臨床現場に歪みと混乱を引き起こしている現状がある。
明らかにこれは、本エイズ医療体制は、我々HIV薬害被害患者の原状回復の施策であるとの本来の意味を厚生省が理解せずに、各関係機関等への周知徹底を怠ったことが最大の原因である。したがって厚生省は、エイズ医療体制に関わる認識を新たにし、医療現場との信頼関係を取り戻すために、以下の項目の遂行を確約されたい。 

    

 1ブロック拠点病院の人的問題および予算措置に関する問題の解決 

 1-a)現在、各ブロック拠点病院に配属されているカウンセラー、情報担当官、医師、看護職等の人材(ACCのリサーチレジデントを含む)の雇用形態を、従来のリサーチレジデントの枠組みからはずし、病院の正規職員化あるいは少なくとも継続雇用を前提とした新たな雇用形態として配属されたい。また各ブロック拠点病院への予算措置を事業費として配分されたい。 

    

 1-b)2月4日パシフィコ横浜「エイズ医療体制の確立を目指して」で、麦谷エイズ疾病対策課長はリサーチレジデント(ACCのリサーチレジデントを含む)の問題につき、冒頭「平成12年度は論文と面接の試験を行なう。しかし、厚生省として、スクラップ&ビルドでもっと抜本的な制度改革、恐らく数億円の規模になるだろうが、平成13年度から制度改革出来ないか検討中である。」と述べた。どのような青写真を検討中か開示願いたい。 

    

42文部省をはじめとする関係諸機関との連携について 

  大学病院がブロック拠点病院として選定されている場合、そのブロック拠点病院機能を充実させるためには、文部省と厚生省との緊密な連携と協力体制が必要不可欠である。
厚生省は、今後は文部省も含めた医療協議を開催することを確約されたい。また文部省をはじめとする関係諸機関との連携・協力関係の構築について、今後の具体的施策をどのように予定されているかについて伺いたい。 

    

5中央運営協議の持ち越し議題について 

    

6医療協議の議事録作成 

  厚生省は、平成11年度の医療協議の終了後、速やかに議事録を作成し、東京・大阪両HIV訴訟原告団・弁護団に送付されたい。 

    

    

  

以上

 

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