


平成15年7月15日
エイズ治療・研究開発センター 運営協議会 議案(案)
東京HIV訴訟原告団
大阪HIV訴訟原告団
エイズ治療・研究開発センター(以下、ACCという)は、輸入血液製剤に起因するHIV感染被害の救済を目的として、和解確認書及び議事確認書に則り、わ が国のHIV感染症の最新・最高度の治療と研究開発・情報提供・研修を実施する機関として、「国の責任」で設置された。平成9年4月の発足以来6年、 ACC医療スタッフが日々努力と研鑚を重ねてくださっていることを評価し感謝している。言うまでもなくACCは、HIV感染被害者の拠り所、とくに重複感 染したHCVの重症化により、HIV治療そのものを断念せざるを得ないほど深刻な事態に至った被害患者(平成15年はすでに10人以上の被害患者がHCV 関連で落命している)にとっては、最後の命の砦となっている。
しかし、それにとどまらず、ACCはHIV医療のナショナルセンターとして全国各地のブロック拠点病院との連携のもと、わが国HIV医療の頂点 に立つ存在である。特に本年は、2月27日の中央運営協議会において、ACCに新しい役割が付与されることとなった。全国のHIV感染者・患者の7割を占 める首都圏について、新たに首都圏ブロック拠点病院を選定・設置するのではなく、ACCがバックアップして首都圏のHIV医療の底上げをはかることが確認 されたのである。その具体的な医療支援の方法は、後記要求事項に記載するとおりであるが、患者数から見て首都圏の対策がそのままわが国のHIV医療施策と いえるほど逼迫した状況において、厚生労働省が従来のようにこの問題から逃避し、原告団の要求を先送りすることは、もはや許容されない。
また、本年は、ACCのある国立国際医療センター病院の建替え計画が現実化した。ACC設置・設立の経緯に鑑み、原告団が、建替え後のACCの 姿に関心をもち、計画に関与するのは当然のことである。原告団は建替え後のACCのあるべき姿について、後記のとおり具体的な要求事項を掲げた。時に医療 センター病院と利害が対立する場面も生じるかもしれないが、その際には厚生労働省が、調整に当たられることを要請するものであるし、医療センター病院に対 しても、ACCが他科とは異なり、上述のとおり国の医療政策として特別に設置された存在であることをご理解願う次第である。
ただし後記のとおり、ACCでは現在、増加しつづける患者(しかも初診で重症化した患者が多い)に対し、建替えを待っていては、対処しきれない 緊急事態も生じている。これらの問題については、厚生労働省は、直ちに解決されたい。さらに、この数年解決・改善されていない諸問題についても引き続き要 求事項として掲げておく。
いずれにせよ本年は、ACCが、外にあってはHIV感染爆発が起こっている首都圏の医療支援という新たな命題に対峙し、また内にあっては国立国 際医療センター病院の建替えという事態に直面する、極めて重要な-わが国のHIV医療政策の将来像そのものを問う-会議である。厚生労働省および国立国際 医療センター病院に対しては、その覚悟を問うものである。
1)説明事項等
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国立病院部長、国立国際医療センター病院院長、エイズ治療・研究開発センター長から、 平成15年度の抱負をお聞かせ願いたい。
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平成14年度の取り組み・実績・研究成果について、報告をお願いする。
2)重点要求事項(項目のみ)
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ACC首都圏医療協力部(仮称)の新設と首都圏医療協力支援室の確保
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国立国際医療センター病院建替えに伴う構想とその具体的図面の提示
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ACC専門外来拡張
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ACC専用研究室の独立・拡充
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ACCにおけるHCV・血友病医療の充実と、人的確保
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ACCにおける救済医療実現に向け、患者家族および遺族の医療相談対応における人的 確保
3)個別要求事項:エイズ治療・研究開発センター(ACC)の医療体制拡充・医療支援機能強化の要求
以下の件について要望する。特に、(1)、(2)Ⅰ、(3)1、2、(4)1については、具体化をはかるため、厚生労働省・国立国際医療センター/ACC・原告団の三者で実務協議をする場を設けられたい。
(1)ACC首都圏医療協力部(仮称)の新設と、首都圏医療協力室の確保 (新規)
本年2月に行われたエイズの医療体制に関する中央運営協議会において、原告団としては、全国のHIV感染者・患者の7割が集中している首都圏地域 の医療体制については、ACCの機能を強化・拡張し、各拠点病院と連携を図りつつ、首都圏地域のブロック拠点病院機能を担っていただくことを要望したとこ ろである。しかし、拠点病院の中には、未だ最善のHIV治療を実施できない病院が少なくなく、迅速な診断と治療が必要なHIV医療を受けられない患者が多い。
ACCとの連携といっても、ACCが座して待っているだけでは進展はないし、特定病院のへの患者の集中はやまない。そこで、首都圏の拠点病院等 と連携を行う組織として、ACC内に新規に「首都圏医療協力部(仮称)」を新設されたい。元来、ACCには医療スタッフの派遣機能(医療支援)があり、こ の機能を首都圏協力部として発揮されたい。具体的には、熟練した医師・コーディネーターナースを目指す拠点病院等にある一定期間派遣し、当該病院のHIV 医療の現場のスタッフとHIV医療を実践・支援することで治療レベルを向上させ充実化を図る。これにあたっては、首都圏医療協力室を確保し、また首都圏の 患者数・規模からみて、人的には首都圏医療協力部専任の医師5名、コーディネーターナース4名、協力室担当職員1名を増員されたい。
(2)物的整備について
Ⅰ.国立国際医療センター病院建替えに関する件 (新規)
1.国立国際医療センター病院の基本構想及び建替え図面の提示
ACCは国立国際医療センター病院内に配置されているため、病院の建替えはACC機能に直接影響するものである。先の運営協議会でも確認している とおり、基本構想の段階で図面等を提示していただき、和解事項及びこれまでの協議を踏まえたACCの機能を保持できるものであるかを確認させていただかな ければならない。そのため、早急に原告団に構想図面を提示されたい。
なお、原告団としては、建替え後のACC関連施設として、最低限以下の設備を設置されることを要望する。
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ACC専門病棟(30床)
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ACC専門外来(6診+5床処置室+吸入室)、ACC専門相談室(5室)
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ACC研究室(現状の1.5倍以上の広さ)+検体保管冷凍室
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ACC医療情報室、ケア支援室、専用会議室(40~50人用)
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ACC首都圏医療協力部支援室
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ACC医療研修室+研修生室
2.国立国際医療センター建替えにおける専門病棟確保の件
現在のACC専門病棟の理念を踏襲し、患者の要望を反映した専門病棟として30床の病床を建替え後の専門病棟に確保されたい。
3.国立国際医療センター病院建替えにおける専門外来確保の件
急性期から重症の患者まで、HIVのナショナルセンターとして最新・最高度の医療を求めACCに通院を希望する患者は年々増加している。近年にな り患者増加に対し、3診察室で対応しているが、急患で来る患者は2時間も待つこともあり、待合で苦しそうに横たわっている姿が少なくない。建替えに際して は、6診察室と5床の処置ベッドを備えた処置室、及び発症予防治療や外来治療として必須な吸入室を完備したものとされたい。また、専門外来に併設して、相 談室5室を確保されたい。
4.国立国際医療センター病院建替えにおけるACC医療情報室・ACCケア支援室・ACC専用会議室の確保及び患者のアクセスを尊重した設置について
本年2月より、医療情報室・ケア支援室・専用会議室が外来2階に移転したが、従前より面積こそ拡充されたものの、専門外来から遠く、エレベーター も近くにないなど、患者の利便性という点では、後退したといわざるをえない。これらの施設は、患者にとっても再新・最高の医療に接する場として重要なもの である。建替え時には、患者のアクセスを尊重した設置をされたい。
Ⅱ.建替え前に緊急に整備されたい件
5.上記医療センター建替えまでの専門外来の拡充 (特に緊急)
現状でも、上記Ⅰ3のとおり、3診察室では対応しきれず、緊急に処置室を診察室として代用する状況すら存在する。外来通院者の激増はこれまでも指摘してきたことでもあり、早急に患者の医療水準を落とすことなく、かつプライバシーの確保された診察室を1室拡充されたい。
6.独立したACC研究室の確保及び治療開発機器導入に則した研究室の拡充と、検体保存冷凍室の確保
ACCの重要な使命のひとつに、新たな治療法等の研究開発がある。現在のACC研究室(治療開発室)は、医療センター研究所の一部を間借りしてい る状態であり、新規研究機材を導入するスペースすらない状況である。このような状況は、HIV感染症治療研究のナショナルセンターとして到底ふさわしいと はいえない。したがって、より広いスペースに、独立したACC研究室を確保されたい。また、研究開発のための重要な資産である検体保存のための冷凍室につ いても、昨年度の運営協議会から要請しているところであり、国立病院部長、センター病院長にも現状を見ていただいたところであるが、いまだ実現していな い。早急な検体保存のための冷凍室の設置を求める。
7.ACC医療情報室・ACCケア支援室への患者のアクセスを改善するためのエレベーターの設置
上記Ⅰ4でも述べたとおり、移転後の医療情報室・ケア支援室・専用会議室は、患者にとってアクセスが良いとはいいがたい位置にある。この状況を少しでも改善するため、これらの施設の近辺にエレベーターを設置されたい。
8.ACC専用研修室と研修生室の確保
ACCの重要な責務として研修機能がある。最近では、HIV医療研修を集中的・全国規模で定期的に行っているのはACCのみである。また、HIV のみならず、感染症医療の人材(感染症医療管理者も含め)育成のためにも、ACCの研修機能を更に強化する必要がある。ACC専用の研修室を早急に整備さ れたい。また、研修生のための待機室(個別のデスクやロッカールーム等の有る)や、全国から来る研修生のための宿泊施設を早急に整備されたい。
(3)人的配置・増員について
1.ACC専門医療スタッフ増員の件
かねてから要求するところであるが、以下の専門医療スタッフの増員を要求する。特に、重複感染した患者を診るHCV専門家は、救済医療実現のため不可欠なところである。
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「HCV・血友病治療等救済医療及び支援の強化」
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HCV等肝炎専門医師(1名)、止血及び凝固管理・研究の血液専門医師(1名)、首都圏医療協力部専任医師(5名)、医療協力部コーディネーターナース(4名)、医療協力室担当事務官(1名)、免疫・アレルギー治療研究医師(1名)、情報・研修担当の医師(1名)。
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「外来患者・入院患者増対応強化と救済医療としての患者家族・遺族の支援体制」
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看護師については、増加するHIV・HCV・血友病患者の包括ケア、医療の質の確保・向上、患者家族・遺族の支援体制実施のため、コーディネーターナース(CN)を中心に以下の人員を要求する。 患者家族・遺族の医療・健康相談支援体制充実のためのコーディネーターナース(2名)
外来通院患者増に対応するための外来看護師(1名) -
「研究機能の強化」 (緊急)
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ACC研究室(現治療開発室)に、被害患者の救済医療の充実や急増するHIV感染者に対する臨床研究の充実を図るため研究職員(3名)を正規職員として新たに採用されたい。
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患者数も1200人にせまり、現在は既定の命題をこなすことで手一杯であり、新たな研究課題が出ても対応できない状況である。しかも、医療職か行 政職の人材しか正規職員として配置されず、ACCの目指す最新・最高度の治療開発とその支えとなる臨床研究が実現できない現状にある。早急に研究職の配置 を実現されたい。
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同センターでHIV医療を研修したレジデント等(リサーチレジデント、派遣を含む)の正職員登用について、HIV医療の重要かつ貴重な人材として採用を含め検討されたい。
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2.人事交流制度の検討(ブロック拠点病院内との交流)とACC配属のCNや看護師に対す るACC帰属及び特殊性尊重
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「ブロック内人事交流制度」
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医師や看護師の専門性向上のため、また地域医療機関との連携強化・医療向上のため、ACCスタッフとブロック拠点病院(当面は国立のブロック拠点病院)との人事交流が可能な制度検討を再度要望する。
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「ブロック拠点病院におけるHIV看護実務担当者/CNのACC定期研修」
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ブロック拠点病院においては、CN実務担当者が1名、多くても2名で、日常の業務にあたっており、このような状況の中で質の向上を目指 すことが困難な環境にありがちである。そこで、HIV看護実務担当者が年に1度、1ヵ月程度のコーディネーター研修を受けられる定期研修プログラムの条件 整備を要望する。
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「ACC配属看護師のACC帰属と特殊性の考慮」
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コーディネーターナースを含むACCの看護師の異動・昇進や採用については、ACCの特別な使命を鑑み、国立病院の制度や慣行にとらわれず、ACCセンター長の指揮下に置き、特段の配慮をされるようお願いする。
特に外来看護師を短期間で異動させることは慎まれたい。また、ACC外来看護師の人員確保と、外来・病棟看護の連続性を確保するため、ACC病棟看護師がローテーションでACC外来勤務にあたることを考慮されたい。
3.研修機能の強化の件
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「ACC研修の多様化確保」
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ACCにおけるHIV医療研修期間は短期だけでなく1年や半年など、専門家育成を視野に入れ、研修要望に沿った制度も創設されたい。そのための、特別の予算措置、体制拡充の措置を要求する。
(4)その他
1.患者家族・遺族の健康相談に関する件 (新規)
感染被害者は感染から20年近くを経過し、服薬に関する負担、将来に関する不安など、その家族も含めて、様々な心的・精神的負担を抱えている。ま た、今般行われた薬害HIV感染被害者遺族生活被害実態調査によると、遺族が被った精神的苦痛も、時間が解決するものではなく、うつ病などの精神的疾病に 罹患したり、心的外傷後ストレス障害(PTSD)ともいうべき健康被害を抱えている状況にあるものもいるということが明らかになった。このような状況をう け、感染被害者・家族・遺族が安心して相談できる場として、ACCには患者家族・遺族への医学的ケアを行っていっていただきたい。
2.国立療養所東京病院のHIV病床等に関わる予算の打ち切りの件 (新規)
国立療養所東京病院は、HIV専門病床20床を国のエイズ対策の一環として早くに整備された。しかし、これはエイズホスピスとしてのものであり、 死病との偏見を助長させるものとして患者らから強い反発をかった経緯がある。その後、急性期医療を終え、しかし病状の進行が緩やかに進んでいく患者や、他 の合併症による慢性的治療が長く続く患者の受入施設として機能することが期待され、ACC開設後にも当然にACCとの連携を取り、受入要請などを受けてい くものと考えられた。だか、これまで国立病院部にも調査を依頼したり、連携について善処を求めとおり、国立病院東京病院は他の疾患に専門病床ベッドを転用 したりと、連携について後ろ向きの姿勢に始終してきたことはご承知の通りである。HIV医療に関わる国費を無駄に転用し、また連携に消極的な姿勢をとりつ づけてきた国立療養所東京病院については、HIV病床とそれに関わるスタッフの予算を打ち切り、より実践的に稼動している国立病院や、設置を要望する ACC首都圏医療協力部に予算を配分されたい。
3.先端・専門医療充実の件
急務の肝炎治療(発症予防を含む)、整形外科、インヒビター保有血友病患者の対応等々の治療体制・研究体制(内外の連携も含む)について、現況と将来構想を説明願いたい。 ACCは国立国際医療センター病院にあるものの、その設立・使命・機能は省令でも定められるように、特別な位置付けにある。わが国におけるHIV医療のナショナルセンターとして、その位置付けを明確にし、内外の医療者・医療機関等々に周知徹底を図られたい。 -
IL-2の国際治験施設として機能を発揮しているように、更に血友病の遺伝子治療をも含む、ゲノム医療・再生医療・遺伝子治療等々の、最先端医療 の治療研究の場としてACCが力を発揮するため体制強化を図られたい。そのために、先端医療研究機関との協力ができるシステムの構築も強化されたい。ま た、遺伝子解析をもとに行われるHIVオーダーメード医療の進捗状況を説明されたい。
また、HIV研究・検査に関して、ACCの機能評価(他研究機関との連携を含む)について、厚生労働省やACCなどから現況を説明されたい。
4.エイズ治療・研究開発センター(ACC)の周知徹底
また、国立国際医療センター内においても、毎年その趣旨を徹底させ、医療関係のみならず人事・財務・研修等々において、独自性とACC機能の活性を支援されたい。
5.コーディネーターナース(CN)活動の整理と制度普及の件
CNが看護部に所属するが故に、その業務(本来ACC部長及び支援調整官の指揮監督下にある)に制約を受けないよう、厚生労働省は責任を持って国 立国際医療センター病院・看護部に周知徹底されたい。特に、この度要求するACC首都圏協力部設置における効果的運用のため、CNが調整官の指揮の下に院 外で活躍ができるためにも制約の排除が必要である。
なお、CN制度の普及にも力を注がれたい。
6.最新治療薬・未承認薬の購入の件
ACCが最新医療及び濃厚治療を実施し、また、そのための治療研究開発を行うに際し、最新治療薬・治験薬や未承認薬が迅速に使用できるよう、引き続き便宜をはかられたい。
併せて、抗HIV薬の使用サイクルが激しく変化する中で、未承認薬の導入は救済医療及びわが国のHIV医療における効果的成果を生ずるため必須である。恒常的に未承認抗HIV薬の導入ができるよう、国家機関としての役割も検討されたい。
7.ACC医療スタッフの海外・国内研修や学会参加、講演について、ACCスタッフの教育研修費独自制度位置付け及びその活用の件
ACC医療者等が、わが国のHIV医療のナショナルセンターとしての重責を果たすため、国際学会や国内の学会に参加し情報を得たり、研究成果を発 表・比較することの重要性は再三指摘してきている。また、HIV医療等関連疾患のレベル向上のための講演などはACCの役割として大変重要なものである。 ACCスタッフがこれらHIV医療及び血友病医療等々関連する学会等に出席するのに有給休暇を利用しなければならないような事態は先の運営協議会で要求し 改善され、ACCが厚生科学研究制度適用機関として位置付けられた。しかし、適用対象者は限られている。そこで、例えば「分担研究者及びその指定する者」 という形で広くACCスタッフが参加できるよう配慮されたい。
また、HIV医療について指導及び情報伝達が活発にできるよう検討されたい。
8.HIV診療支援システム(A-net)
ACCを中心に、HIV診療支援ネットワーク整備が進んでいる。居住地域で医療を受けられる診療支援体制が構築されることは被害者の救済のみなら ずわが国のHIV感染症医療の向上に大いに寄与するところである。また、医療情報の蓄積による医療レベルの向上も大いに期待されるところである。A- netの現況について説明願いたい。
4)感染症新法とエイズ治療・研究開発センターの関係
「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」いわゆる感染症新法との関係で、昨年ACCの位置付け・組織、人的・物的体制等につき、わずかなりとも影響があるときには、原告団と協議する旨約束された。引き続きこのことを厚生労働省は確約されたい。 -
また、上記法律や予防指針で国立国際医療センター及びACCは感染症治療、予防等に関して、人権に配慮すること、良質な医療を提供すること等、わ が国の最も模範となるべき医療機関として位置付けられている。特に、国立国際医療センター病院に特別に位置しているACCは、国立国際医療センターそのも のが感染症医療のナショナルセンターとして存在することでその存在意義・機能が高まる。逆に、国立国際医療センターの今後の医療に対する方向性いかんに よっては、国立国際医療センターがACCの機能を阻害する要因にもなりかねない。
国立国際医療センターが感染症医療のナショナルセンターの責務を果たすことを改めて確認したい。また、ACCが入る国立国際医療センターの全面 改築構想があると伺うが、いかがか。冒頭にあるように、ACCにわずかなりとも影響があるときは協議する約束である。改築計画がある場合は、構想が練られ ている時点で対応を協議する必要があり、早急にその場を設定されたい。内容如何によっては、5)に示すように、ACCの独立化を含めその対応を早急に協議 しなければならない。
5)更なるエイズ医療の向上を目指すエイズ治療・研究開発センター(ACC)の独立
和解におけるエイズ治療研究センターについて、原告団は当初から特別な使命を遂行するため、また既存の制約や干渉による運営障害を避ける ため、独立の施設として要求した。しかし、厚生大臣交渉の過程で独立の施設を作るには3年かかるとの話から、その設置の緊急性に鑑み、当面の措置として国 立国際医療センター病院に特別な位置付けとして置くこととした。
国の責務としての薬害被害者の原状回復医療に全力を尽くし、そしてわが国のエイズ治療研究開発のナショナルセンターとしての重責を担い、かつわ が国だけでなく国際的にもエイズ治療研究開発の推進に活躍することがエイズ医療全体の更なる向上に重要である。そうしたエイズ治療の実効を更に挙げていく ために、内外の優れた人材を活用しその研究治療に対応しうる設備を整えるため、当初の要求の通りエイズ治療・研究開発センターが治療研究開発・研究施設を 含め独立した施設として規模を有する形をとることを強く求める。
平成14年7月4日
エイズ治療・研究開発センター(ACC)独立とそれに関わる国立感染症研究・治療開発センター(仮称)設立について(案)
東京HIV訴訟原告団
大阪HIV訴訟原告団
エイズ治療・研究開発センターは、和解確認書・和解所見にもとづき、HIV感染症医療の最高度の医療確保を目的として原告団の要求にし たがって設立された。しかし、原告団は当初からエイズ治療研究センターは独立の施設として要求し、厚生大臣交渉の過程で独立の施設をつくるには3年はかか るとの話から、その設置の緊急性に鑑み、当面の措置として国立国際医療センター病院に置くこととした。エイズ治療・研究開発センターが被害救済の実効を上 げるとともにわが国のHIV治療研究開発とその指針・情報の発信という本来の目的を達成するため、また世界的解決が求められているHIV医療の国際貢献と いう目的に即したHIV治療研究開発を担うため、HIVのナショナルセンターとして更に強化充実が必要である。 航空機等の高速移動の社会で、ハンセン病、エイズに端を発し、本年発生したSARSのように、ヒト・動物由来の国際感染症時代に、国民の健康・命を守る国 の感染症危機医療は、迅速・適切に感染症罹患者の命を救うと共に、患者・家族の生活を守りつつ感染症の拡大を阻止することが求められている。これは、エイ ズ発生当初の混乱にわが国の血友病患者・家族が、国の感染症危機管理対応の不適切さで、未曾有の被害と偏見差別という社会的スティグマ(烙印)に苦しめら れてきた経験から国に意見するものである。直近のSARS対応を見ても未だ十分といえないわが国の感染症に対する医療体制に鑑み、薬害エイズ事件にも関連 する輸血感染症や、感染症医療の緊急対応と質的向上を目指すべく、エイズ治療・研究開発センターを独立させるとともに、同センターを母体としてわが国の感 染症治療・研究開発を担うナショナルセンターを設置されるよう、下記の件について要請する。
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国が責任を持った感染症疫学調査・病態調査や感染症研究を、国際的対応も即して実施できる国立感染症研究センターの改編を含め大規模充実と整備する。
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発生した感染症に対する医療・患者や家族の人権を守る社会啓発を国が指導性と責任を持って総合的に感染症患者を救う体制を整える。
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エイズ治療・研究開発センターを母体として、総合的医療を持つ国立感染症治療・研究開発センター(仮称)の新規設置。
エイズ治療研究開発・輸血感染症治療研究開発・他1類から4類感染症治療研究開発を含む 付属病棟600床規模 研究所 看護等医療者研修施設 -
上記の機能及び国立感染症治療・研究開発センター(仮称)設置についての検討会(準備会)を設け、原告団の参加を保証すること。
以上
index > 大阪HIV薬害訴訟原告団 > 現在地
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